株式会社きくち
「夢と感動を与え、その壁の向こうへ」

インタビュー
株式会社きくち 代表取締役社長 菊池雅人

株式会社きくち
代表取締役社長
菊池雅人さん

プロフィール

茨城県出身。父親は、ひたちなか市で菓子の製造販売を行う(株)きくちの創業者。
自身は、某有名菓子企業でキャリアを積み、商品開発やマーケティングのノウハウを身に着ける。2004年、父の事業を継承し、代表取締役に就任。地元の名産である干し芋や栗などの食材を用いた菓子作りで茨城の魅力を全国に発信し続けている。

県央、県北地区11店舗を展開。夢と感動を与えられるお菓子を

1965年に創業した当社は、ひたちなか市を中心に水戸市、常陸太田市、東海村、日立市で「お菓子のきくち」11店舗を展開している菓子店です。
「夢と感動を与えられるお菓子づくり」を信条とし、和洋菓子、ケーキ、餅、おはぎ、赤飯、饅頭など種類豊富にご用意しております。

中でも、年間160万個を販売する人気ナンバーワン商品「ほっしぃ~も」をはじめ、茨城県ならではの素材を使った趣向を凝らしたお菓子は、地元だけではなく、県外からのお越しのお客様のお土産としても人気です。

四季を彩る花のような一瞬の淡い感動をお菓子に託して、四季折々の形にすること。
からだにやさしい素材を厳選しいつでも安心して楽しくお召し上がりいただけるよう、真心をこめてお菓子をつくること。
いつまでも皆様にまろやかで素朴な味わいのお菓子をお届けするのが、私たちのお菓子づくりの原点です。

「ACTIVE YOHKAN」をベースに、厳選素材でアスリートの補食用羊羹を開発

水戸ホーリーホック様は、J2リーグに所属している県央地域で唯一のプロサッカークラブ。
当社はこれまでサッカーに対して少々距離がありましたが、同じ茨城を拠点にしているクラブへの愛着や応援したい想いは以前から持っていました。
そんな中、「ほっしぃ~も」のスタジアム販売をきっかけにお取引きが始まり、今回スポーツやアウトドアで手軽に携帯できる羊羹「ACTIVE YOHKAN」をベースに、水戸ホーリーホックGMの西村卓朗さんプロデュース、Health & Performanceコーチの蜂屋雅司さん監修のもと素材の変更や改良を加え、プロアスリートの補食品として「MOVE BEET」お作りすることになりました。

「ACTIVE YOHKAN」は、2022年12月に新発売された羊羹です。
北海道産小豆、茨城県産干し芋をメインに使用し、乳酸菌100億個とオリゴ糖が入った免疫向上も期待できる付加価値の高い商品。
独自の「干しいも加工技術」を注ぎ込んで、これまで未流通だった干しいもの羊羹を誕生させました。
パッケージは「MOVE BEET」と同じで手のひらサイズ。
携帯しやすく手が汚れずに食べられるコンパクトな形状で、スポーツやアウトドア系、腸活、健康志向の方におすすめです。
2023年1月末に開かれた勝田マラソンでランナー全員に配布し、多くの方々から好評を得ています(2024年も配布予定)。

アスリートは毎日複数回の補食を摂取しており、中でも糖分が非常に大事。
しかし添加物の多い食品でそれを続けると、腸もれ(腸を荒らしたり腸粘膜のゆるみ)の原因となり、食べたものの消化吸収がしっかりされなくなる。
要はせっかく食べたものがきちんと身にならなくなってしまう。
これらのことを水戸ホーリーホックGMの西村卓朗さんとHealth & Performanceコーチの蜂屋雅司さんから学びました。
特に蜂屋さんの専門である分子整合栄養医学は未知の世界でした。
エネルギー消費の激しいアスリートが、食事に気配りをしていることは知っていましたが、日常的に1日複数回の糖質を「補食」していることや、単にエネルギー補充のためだけではなく、運動後に糖質を「補食」することでカタボリック(筋分解)を抑制することなど、アスリートの「補食」について良い学びになりました。

てんさい糖を使用した羊羹の開発に悪戦苦闘

「ACTIVE YOHKAN」をよりシンプルな素材に厳選し、ミネラルが豊富で天然のオリゴ糖を含むてんさい糖をメインに使用するという方向性は早い段階で決まりました。
しかし素材を変えるとなると、また一からの出発。
大幅な調整が必要となり、「果たして上手くいくだろうか?」と当初は確信がありませんでした。
羊羹は滑らかな食感や咀嚼の良さが求められます。
使用の国産てんさい糖は全て北海道産なのですが、粉末や液状など各社で加工の仕方が異なり、粉末のものも、きめの滑らかさ、粗さが違います。
数種類のてんさい糖を取り寄せて、試行錯誤をしましたが、色合いや甘さの調整が難しく、断念する寸前までいったことも…。
また、干しいもの味を損なわずに、なおかつ自然に近いような甘味、微妙な酸味をどうやって出せばよいかどうかもポイントでした。
それも上手くクリアでき、ホーリーホック様に納得してもらえるものが出来上がりました。
「ACTIVE YOHKAN」というベースが元々あったので、それに比べたら開発期間は3分の1ぐらい。
商品開発担当2名の意見も取り入れ、私が舵取り役をしながら、十数回の試作を毎日実施し、ようやく完成したのです。

壁を乗り越え、その一歩先へ。現役生活のもうひと踏ん張りを後押し

「MOVE BEET」はてんさい糖の他、古来より伝承されている健康食品の国産米飴、空気に触れないように「密閉搾り」製法ですりおろし搾った青森県産100%りんご、そして瀬戸内海の海水100%で作った海塩「花藻塩」などを使用しています。
羊羹のベースとなる干しいもはミネラル豊富な低GI食品で、北海道産小豆はビタミンC以外のほとんどの栄養素が含まれるスーパーフードです。
小豆のでんぷんは煮ることによって、難消化性でんぷん(レジスタントスターチ)に変化し、 消化されずに大腸に届いて腸内細菌の栄養源となります。
これは食物繊維と同じ働きをするので、腸内環境の改善が期待できます。
今年3月から選手への提供がスタートしていますが、「食べやすい」「美味しい」との声が寄せられています。
「選手に良質な糖質を食べさせることができる」と西村GMが一番喜んでいたかもしれません。

プロは選手寿命を少しでも長く伸ばすために、皆しのぎを削ります。
現役生活を楽しく長くという思いでプレーするもの。
しかし、その長くがなかなか叶わないのがスポーツの世界です。
水戸ホーリーホックは若手中心のチーム。
若い選手は何を食べても動けるので、なかなか自分ごととして響かない部分があるかもしれません。
しかし、きちんと食事管理を意識している選手の方が、やっていない選手よりも、怪我からの回復も含めて、選手生活の後半に響いていく。
同い年でもまだ現役で活躍している選手もいるのに、もうひと踏ん張りしたいのに、それが出来ずに引退するのは辛く、悔しい。
プロを引退した身である西村GMは、その部分を熱く語っていました。

選手はこれを越えたら一歩先に行けるという壁が見えるもの。
その壁を一つでも乗り越えるために。
この羊羹を補食の一食、二食にでも置き換えてもらえたら、いつか身体の変化を感じてもらえると思うのです。

プロを目指す金の卵達、老若男女のあらゆるシーンに寄り添う羊羹

「MOVE BEET」はスポーツ用の補食だけではなく、塾での勉強やミーティング前など集中力を高めたい時、持病のある方の糖質管理、妊婦さんがお腹の赤ちゃんに安心・安全な栄養と届けたい時、そういったケースでも食べて欲しい商品です。
現行品は賞味期限が一年間ありますので、災害時の非常食としても最適です。

現在はECサイトのみの販売となりますけれども、地元でのプロモーションも同時に展開したいと考えています。
今後は地域の自治体と協力し、食育の部分でのアプローチを模索しています。
例えば、水戸ホーリーホックが地域でサッカー教室と食育教室をセットで開催し、志ある親子に正しい補食の仕方を学んでもらう。
食の大切さをきちんと理解することで、世界で活躍するスポーツ選手が地域から出てきて欲しいですね。
大リーグの大谷翔平選手の地元が湧いているように、やはり地域で育った子どもが幸せなプロ人生を送ると、皆、盛り上がります。

もちろん、水戸ユースの選手たちも積極的に食べてもらいたいです。
食べる事もトレーニングの一環ですし、西村さんや蜂屋さんの想いを下部組織の選手にも受け取って欲しい。
現役スポーツ選手だけでなく、これからプロになりたいと一生懸命に努力している子に摂取してもらいたいです。

新たなマーケットの可能性を秘めたコラボレーション

菓子の良し悪しは、素材と配合、製法技術で決まります。
「MOVE BEET」は素材を厳選して極力シンプルに仕上げました。
なので、ビーガンの方、グルテンフリー商品を求める方、糖質管理をしてる方、添加物を極力摂取したくない方など、万人に受け入れてもらえる商品になっています。

これまで当社はお菓子の見栄えや美味しさを絶えず追求してきました。
「グルテンフリーの商品を作って欲しい」など時代に応じた需要はありましたが、今までは当社の分野ではないと思い込んでいたのです。
しかし「MOVE BEET」を通じて、お菓子はただ美味しく楽しんで食べていただく事だけではなくて、身体づくりという機能的な部分にも有効なのだと改めて気付かされました。
この羊羹は企業として新市場の開拓、新たな方向性を掴むため、絶妙にマッチした商品となったのです。

「MOVE BEET」を勝利の一因に。来シーズンの飛躍を後押し

身体は食べたものでしかできません。
選手全員がそれを理解し、食の重要性を知っているのであれば、この羊羹を最大限に活用して、「自分の身体を強化したい」「チームで活躍したい」「上に行きたい」と向上心を持って欲しいと思います。
シーズン通して活躍できる、現役生活を長く続けられる身体づくりをして、「ホーリーホックでプレーできて良かった」と思ってもらいたいのです。

シビアですが、プロスポーツは勝つことが大前提。
そこをしっかり後押しできればいいなと思っています。
観客動員の増加はクラブとして非常に重要な部分だと思いますが、それには勝つことで人気を上げ、ファンを作り、子ども達に将来の夢を与え続けることが必要だと思います。
そして、「MOVE BEET」がその勝利の一因となり、クラブに貢献することができましたら幸いです。

記事提供:デイリーホーリーホック